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2022年に開催された Taipei Toy Festival 台北国際玩具創作大展では、カラフルな色使いと手描き絵のようなタッチが目を引くクマさんソフビフィギュアは、中空工房さんによる作品「FRIDAY BEAR」です。全身から放たれるリラックスした雰囲気が多くの観客の心を捉えました。
それから1年後、TOY PEOPLE NEWS では「FRIDAY BEAR」の生みの親であり、日本在住20年以上のイギリス人アーティスト、ロブ・キドニー氏にインタビューをさせていただきました。ロブさんは、音楽、服飾、雑誌など幅広い分野で活躍するイラストレーターにして、東京・北区田端にあるギャラリー&ショップ「WISH LESS」のディレクターでもあります。
今回のインタビューを機に、「FRIDAY BEAR」の誕生秘話やロブさんの豊かな創作経験を語ってもらいました。
玩具人:学生時代は何を専攻されてましたか? これまでに他にどんな仕事をされていましたか?
Rob Kidney:高校卒業後、ロンドン芸術大学のロンドンカレッジオブコミュニケーション(London College of Communication)へ進み、徒弟制度を通じてリトグラフ印刷を2年間学び、そして印刷業界で9年間働いていました。
私が25歳のとき、ワージングにあるノースブルック・カレッジという学院のアートファウンデーションコースに入りました。その二年間にスキルを身につけ、自分のポートフォリオを充実させました。その後ブライトン大学でイラストレーションの学位を取得し、30歳からフリーランスのイラストレーターになりました。
玩具人:東京にギャラリー「WISH LESS」を開廊したきっかけは何ですか?展示内容はどのような基準で選んでいますか?
Rob Kidney:その頃、私はイラストレーター/アーティストとして、妻の洋子はフリーランスのグラフィックデザイナーとして働いていました。日本に10年住んでいる自分は、一人でスタジオに過ごす時間が増えて、強い孤独感に襲われることに気づいたんです。今の生活パターンを変えないとダメだと思いました。
イギリスには、日本で作品を発表したいという友人アーティストたちがたくさんいて、常に「適したスペースをおすすめしてくれないか?」と頼まれました。しかし、東京にはアーティストが経営するオルタナティブ・ギャラリーが少ないです。これをきっかけに自分たちのギャラリーを開くという考えが生まれました。
東京で適切な物件を見つけるのに1年かかったですが、最終は山手線の終点「田端」という閑静なエリアを選びました。100年前の大正時代以来、多くの芸術家たちがここに集まり、日本のモンマルトルとも呼ばれていました。
2012年のオープン以来、「WISH LESS」のキュレーショは私たちが心から愛し、尊敬している国内外のアーティストを紹介することでした。私たちが目指しているのは流行を追い求めることではない、人に影響を与えるようなハイクオリティな展覧会と思います。
玩具人:どのような経緯で自分の玩具を発売し始めたのですか?
Rob Kidney:自分が創造したキャラクターを立体化することは長年の夢でした。常に新しいキャラクターを生み出しているアーティストとして、たくさんのキャラクターの中に一つを選べてソフビフィギュアにするのは本当に大変だったと思います。
東京にいる間にいろいろな会社とソフビフィギュアの製造について話し合ったが、なかなかいい会社が見つからなかったです。ある日、ギャラリーで東京にある玩具メーカー「ケンエレファント(Kenelephant)」の石山健三社長を紹介されました。私は彼にお気に入りキャラクターの絵を見せたところ、ソフビに発展させる可能性があると言ってくれました。話し合いの結果、この「FRIDAY BEAR」をソフビフィギュアにすることになりました。
玩具人:ケンエレファントのアートトイ部門『中空工房』と仕事をした経験をお聞かせください。例えば、作品の制作プロセス (ラフ案、原型制作、仕上げ...etc)。
Rob Kidney:ソフビフィギュアを作るのは初めてだったので、彼らとの作業は本当に勉強になりました。最初の段階は「FRIDAY BEAR」の三面図を描きましたが、かなり難しいと思います。体型を捉えるために紙粘土で立体モデルを作ってみました。
その後、最初のワックス原型を見に中空工房のスタジオを訪れた時、想像以上のクオリティの高さ に驚きました。ディテールまでのこだわりと後ろ姿の再現度は信じられないほどでした。日本で最高の玩具メーカーのひとつと仕事ができて本当によかったと思います。
私は2つの小さな変更を要求しました。1つ目は鼻を小さくすること、2つ目は少し太らせることでした。最も重要なポイントは、初のカラーバージョンは私が最初に描いた絵にできるだけ近づけることですので、DICカラーガイドで色指定しました。
パッケージのデザインは、私が若い頃に好きだったフィギュアを思い出させるため、透明窓付き箱に決めました。熟練の原型師が原画の個性とエネルギーをいかにフィギュアに取り込んだか?ということを示す のは不可欠だと思います。そのため、箱の裏面には「FRIDAY BEAR」の原画を入れました。
玩具人:「FRIDAY BEAR」の名前の由来は?
Rob Kidney:おもちゃですが、彼に自己紹介をしてもらおうと思っています!
「こんにちは、僕の名前は FRIDAY BEAR。東京都心のオフィスでの仕事はあまり好きじゃないから、毎週金曜日、仕事が終わると渋谷にダンスミュージックの中古レコードを探しに行くんだ。レコード屋に行く途中で小さな公園で缶ビールや日本酒を飲みながら休憩することが多い、いつも顔がピンク色になるんだ!
中古レコードを探している時はすべての悩みを忘れていく、結局お金を使いすぎてしまう!僕は常に右手に12インチのレコードバッグ、左手に7インチのレコードバッグを持っているのだが、長年続けてきた結果椎間板ヘルニアになってしまったね...。ほとんどのお金をレコードに費やしているので、ディスカウントショップで安物の光沢のあるスーツしか買えない。あれ?なんかきついかも?もしかしたら僕は狭いアパートでジャンクフードを食べることが多いから、太ってしまった!?」
玩具人:普段はどんな方法でインスピレーションを得ていますか?
Rob Kidney:絵を描くことを日課として、新しいキャラクターを想像し、考案しています。これらのキャラクターの中には、二度と描かれないものもあれば、洗練されて個性を与えられたものもあります。私は東京での生活からインスピレーションを受けています。視覚に心地良い刺激を与えてくれる街で、かわいいキャラたちのイラストが豊富にあります。その最たる例は「FRIDAY BEAR」のインスピレーションですね。
自分は中古レコードを探すのが大好きで、よく金曜日の夕方に渋谷のレコードショップを覗きに行くのだが、他のお客さんのほとんどが仕事を終えたばかりで、スーツを着ていてレコード棚を覗きながら熱中することに気がついました。それで、「レコードショッピングが大好きな、スーツを着た働き者のクマさん」というアイデアが生まれました。
玩具人:これまでの作品の中で、どれが一番好きですか?その理由は?創作過程で最も印象に残った作品はどれですか?
Rob Kidney:1つ選ぶのは難しいけれど、やはりイギリスのエレクトロニック・ミュージック・デュオ「ベースメント・ジャックス」の2nd アルバム『Rooty』(XL- Recordings)での仕事ですね。それはまさに私の人生を変えるような経験でした。その頃私は大学を卒業したばかりで、アルバムジャケットのイラストやハンドレタリングの制作を依頼されました。
ロブ・キドニー氏が制作したベースメント・ジャックスの 2nd アルバム《Rooty》のジャケット。 Image credit:TurntableLab
それだけでなく、アルバムからリリースされたすべてのシングルのイラストも制作しました。それがきっかけで、彼らのステージショーに使ったモーショングラフィックを手がけたり、『Jus 1 Kiss』という曲のミュージックビデオを共同監督することになりました。
このような才能があるミュージシャンと仕事をするのは本当に楽しかったし、彼らの独特な音楽を視覚的に表現するアートワークを提供したいと強く思いました。音楽業界で働くことは、私のキャリアの中で様々な機会に恵まれてきたことであり、本当にやりがいのあることだと思います。
玩具人:どのような場所で作品を作りたいですか?スタジオの様子を教えてください。
Rob Kidney:私の仕事場は2つの小さなスタジオに分かれていて、1つはドローイングやアイデア発想のためのきれいな空間で、音楽コレクションのレコードやCD、ターンテーブル、そしてアートやデザインなどの参考図書が置かれています。もう1つのスタジオは主に絵を描いたり、より雑多な活動をするために使っています。どちらもかなり雑然としているが、いつでも手元に素材があることを楽しんでいます。
音楽は私の創作活動の支柱です。スタジオには、常に10時間ぐらいのインストゥルメンタル・テクノDJミックスCDを再生しています。そうするとトランス的ないい状態に入り、創作活動に没頭できます。隣人がいないので、音量をどれくらい大きくても大丈夫です!
玩具人:ご自身の作品以外に、コレクションしているおもちゃなどはありますか?最近、特に新しいおもちゃに夢中になっていますか?
Rob Kidney:実はこれまでの10年間、自分のおもちゃコレクションが減ってきています。東京に来た当初 は、中野ブロードウェイなど場所で時間をかけて探し、大きなコレクションを築きました。70年代や80年代の日本のリゾートのお土産フィギュアに夢中になっています。特に使われている色や素材が好きですね。これらのお土産フィギュアは量産と手工芸の両方の特徴を持っていると思います。
最近、私のコレクションに加わった魅力的な新しいおもちゃはメキシコのEdiciones Figuritasが製作し、アーティストのパメラ(ᴘᴀᴍᴇʟᴀ sᴜsᴛᴀɪᴛᴀ)さんがデザインしたフィギュア「Lamby」です。私はパメラのアートが大好きで、このフィギュアは彼女のマークメイキングスタイルを見事に表現しており、パッケージも美しいです。
玩具人:創造活動以外の趣味は何ですか?
Rob Kidney:自分がハマっているのは、中古のレコードやCD、アンティークや本を探し出すことですね。東京はそんな私の欲求を満たしてくれる素晴らしい場所です。また、東京の小さなバーやクラブで7インチレコードを使ってDJをするのも好きです。室内観葉植物のお世話が好きで、お気に入りのはヤシ、サボテン、食虫植物です。
玩具人:あなたにとって、"TOYは何ですか?"。手書き(または絵)で答えを書いてください。
Rob Kidney:
この度、TOY PEOPLE NEWS とロブ・キドニー氏とのコラボレーション企画商品として、TOY PEOPLE 限定「FRIDAY BEAR - TOY PEOPLE Ver.」が発売決定となりました。(詳細な抽選販売情報)
ロブ・キドニー氏の最新作をぜひご覧ください!
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